407 泥山水

 春は夏へと進む。
 菫や諸葛菜、花韮から始まった庭は西洋十二単、蛍葛、日本桜草、苧環、石楠花、飛燕草、都忘れ、海老根、宝鐸草と咲き続いている。
 頭上の姫木蓮は散っては咲くを繰り返し、柿は萌え、梅は実をつけ、金木犀は剪定した分を取り戻すように伸びている。

 アフリカ桜草とでも呼びたいロードヒポキシス(アッツ草/rooisterretjie ルーイスターリティ 赤い星)も咲いていた。
 今年は植え替えをしたけど、時期が遅かったから花は期待していなかった。やっぱり雑草並みに強いんだね。昨年は4月の半ばに咲いたので一週早く咲いたことになる。

 老母は庭の蕗の葉を和え物にしていた。自分は柿の葉をいつ摘もうかと眺めていた。そして、うちに桜っぽい実生の木があったことを思い出していた。桜の葉の塩漬けも作れるか・・・

 庭の牡丹が枯れた後、庭を改造して小さな丘というか小山を作った。枯山水ならぬ泥山水といった感じだ。
 泥山水とは我ながらよく言った。この辺りは古くは畑だが、関東ロームでも水捌けが良くない赤土も多い。
 雨が続くと泥山は流れてしまう。その土留めのためにも根を張る菊類を移植した。

 泥山水の「川」に相当する溝は、枯れ葉を掃き入れる掃き溜めである。溝でヤブガラシなどの雑草の地下茎を止める狙いもある。

 山の対岸、庭の一等地でもある牡丹跡には、日陰に植えられて咲くことがほとんどなかったハマユウ(Crinum asiaticum/浜木綿)を移植した。もちろんまだ咲く季節ではない。
 いただきもののクサボケも植えた。クサボケはたくさんもらったが鉢植え3つ、直植え3ヶ所に落ち着いた。どこがよく育つはわからないが、よく日が当たるのは鉢植えだけだ。

 そのクサボケ近くの日陰にも小さな山を作り、大き目の庭石を載せた。その様子が墓石に見えるので「親父の墓」と呼んでいる。生前に「庭に埋めてくれりゃあいい」などと言っていたが、さすがに法的にそういうわけにもいかない。泥山に石を置いたら妙に意味深に見える。その石の脇に捨てられなかったチューリップの球根を植えたら、いかにも供花みたいで・・・

 菊山には菊以外の雑草、ハコベ・三葉・諸葛菜も飛んでくれ固まってきた。新しく作った墓石山はまだチューリップしか生えていない。来年以降も山が残っていればいいのだけど・・・

 泥山水の「枯れ葉川」は、夏になると鬱蒼と草に埋もれてしまう。秋冬に再び現れる。
 春になったら枯れ葉をどかして、庭の奥の剪定ゴミと一緒に腐葉土化を進める。
 腐葉土化は次第にスペース不足になってきて、それが悩みだ。この山作りの目的の一つは腐葉土の処理でもある。
 盛土に腐葉土を混ぜて山にした。山にして水捌けを促し、草花が育つ場所を視覚的に分けている。

 腐葉の層が厚い場所は、湿度が保たれて温暖化とヒートアイランド現象による乾燥から微生物を守ってくれる。
 すると不思議なことに鳥散布の植物が増える。
 シジュウカラは虫を食べにくるだけだが、メジロやヒヨドリは様々な種子入りの糞をする。お陰で買わなくても面白い植物を見られる
 でも、その多くはネズミモチかトウネズミモチ。桑や南天だったら早く抜かないと根を張られると面倒になる。
 万両と山椒はわりとコンスタントにやって来る。ピラカンサは一時期と比べると見なくなった。
 植栽にも流行り廃りがあるから、どこかの家主が代がわりして、家や庭が変わればうちに来る鳥の食事も変わるだろう。

 で、いつの間にかやってきたのがンショウ(天南星)。今は一つを鉢植えにして、どこに置くべきかで悩んでいる植物でもある。

※例によって、この記事でも「ンショウ」と書いたものを書き直しました。カタカナで覚えると間違いやすいね。天南星です! んしょう、天南星てなわけです!!

 寄せ植え用のローボウルっていうのかな、以前にも書いたけど、重たい素焼きの鉢。
 老母は西洋桜草を植えていたけど、日当たりの悪い庭に西洋桜草はなかなか定着しないし、そもそも種で飛ぶ草を鉢に囲うのは難しい。大きい鉢でもプラ鉢なら軽くて、日向と日陰とをに行き来させられるけど、重い素焼きは迷惑千万。
 で、老母の管理から離れて、暫定的に庭のツワブキを株分けして植えることにした。他にもポット植えのまま管理してたものなんかを入れたりしてたけど、できればもっと見栄えのする植物を植えたいとは思っている。
 で、鉢を空けようかと思ってた頃に、久しぶりに現れたテンナンショウの緊急避難先にしてしまった。ツワブキもテンナンショウも日陰を好むらしいから、いいやと思ってさ。
 このテンナンショウは鳥散布なので、詳しいことはわからない。ただ、ツワブキよりも日陰で湿った環境を好むらしい。

 で、湿った日陰もすでに草でいっぱいだと気付いてしまった。
 この春に、咲かない水仙を全て一箇所にまとめた。
 毎年咲いている白い水仙と完全に場所を分けたが、咲いてないので黄色か白かもわからない。
 咲かない水仙を全て移植して場所を空けたけど、テンナンショウ向きとはいえない。
 
 放って置けば、ドクダミとシャガが覆ってしまう庭の日陰は生存競争が激しい。実際にテンナンショウの一つはそんなところに生えているが、埋もれてる感じだよね。
 勝手に生えているなら、それはそれでいいんだけどね。

 日陰日向の境界、踏み固めた人道との草地の境には、飛燕草やハコベ、オランダミミナグサ、三葉や紫蘇が生えてくる。つまり思っている以上に明るいということ。そこへはドクダミやシャガも侵出を狙ってる。
 イネ科の雑草、スズメノカタビラなんかは生えてこないから、明るいと言っても知れている。なにより湿っているから、ヒメオドリコソウやホトケノザも生えない。
 ヒメオドリコソウはなかなか庭に広まらないが、ホトケノザはかなり広まった。ホトケノザが生えているところが草の一等地だが、ほぼ人道と重なってしまい植栽はできない。
 テンナンショウに限ると環境的にはドクダミ地帯がいいのかもしれない。しかし、ドクダミ地帯はドクダミとシャガとジャノヒゲの藪だから、植えるというのには適さない。勝手に生える、生存競争の場所だ。

 というわけで長々書いたが植える場所がない。

 うちでは朝顔の種をほとんど回収せずにそのままにしてきたが、昨年咲いた朝顔が良かったので久しぶりに種を保存しておいた。
 ところが、戦争もあって始めたカボチャの発芽率が良すぎて、朝顔の種を撒く場所がなくなった。北面ではなく、居間から見える場所にしたいのだけど、意図して植えられる場所はもうない。
 プランターにしても置く場所がない。
 多分、朝顔はもう放って置いてもどこかから生えてくるのだけど・・・

土いじり泥だらけ春の汗まみれ

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