災とせず兆とする

　改めて辰年の 辰 には龍という意味はない。
　辰は中国の古代農具に由来し、実は今でも少数民族の間でほぼ同じ形の農具が使われているらしい。名称こそ辰ではないが、うろ覚えだけどテレビで中国秘境の少数民族を扱った番組で見たはずなんだ。細かいことは覚えてないけど。
　それはさておき、私は2024年元旦を寝倒して午後5時前にやっと起きたので、能登半島地震の第一報を知らない。
　起きたら全チャンネル地震情報で、NHKのアナウンサーが度々強い口調で「逃げること！」と繰り返していた。人命を救いたいという気迫に涙が出た。
　年をとったな、俺･･･ 涙腺が脆すぎる。
　もっとも、現地の人のどれほどがそのテレビを見ていられたか･･･ 被害を見るとそういう状況ではなかっただろうことは想像できる。初期の揺れで停電するか、テレビが飛ぶかして、逃げられなかった人の多さも想像できる。
　津波被害は東日本震災に比べるべくもないが、輪島の火災などは熊本とも異なった異常さがあった。
　何より自民党安倍派の石川県知事や政府与党が不正で捜査されようという状況で、全く国内問題に着手できない中での被災というのも切ない。
　救援体制も大本営のような統制ぶりで、不透明感も凄まじい。
　民主党政権の災害対応は手当たり次第で混乱や批判も多かったが、先手先手で詳細を後で確認するという初手の速さだけはあった。
　しかし、東京電力の虚偽で米軍の友達作戦までも被曝させることになった。自民党時代の負の遺産が足枷になるのは今でも同じだ。

　あれは3月で遅い東北の春も間もなくという震災だったため、間もなくして暑さや異臭が問題になった。熊本大分地震も4月で間もなくして暑さと異臭が問題になっていた。
　1月の北陸は冬ど真ん中。どちらかと言えば、117阪神淡路大震災に時期は近い。しかし、豪雪の北陸と瀬戸内に面した関西とでは条件が違いすぎる。
　すでに自衛隊派遣の手際でも話題になっているが、冬の北陸、その中でも能登半島という突起部は、ウクライナのクリミアではないが孤立しやすい条件が整い過ぎている。
　さらに冬の北陸は風も独特で、日照時間の短さと合わせて苛酷な地域だ。
　現代社会がどんなに発展したといっても自然・気候には勝てませんよ。さらにロシアやイスラエルの影響で物価高が続いている。燃料の高騰に対しては日本はもう限界間近だ。
　一本勃ち能登は、地政学的にも救いようがない孤立した場所だからこそ、外様の大藩 前田家が潰されず残れたといってもいい。福島正則や加藤清正と違い、封じ込め易く入りにくい北陸の太守だったからこそ生き残れたという側面あっただろう。

　さらに他の震災と違うのは、石川県知事が正月から東京にいて、直に被災しなかったこと。感情的に石川県民とかなり乖離があるはずだ。直撃の恐怖をしらないのだから。
　「一本化」と称して民間からの救援物資を一律に規制したため、今後その影響がどうだったかも検証しなければならない。
　すでにコロナ感染の避難所クラスターが発生しており、オーバーシュート(感染者倍増)も懸念される。
　さらに7日からは雪が降り始め、低体温症への懸念が高まるが、救援物資の有力な流通ルートはまだなく、被災者移送の計画も出てこない。そこへ火事場泥棒、加えて犯罪系Youtuberまでやってくるという後手後手を逆手に取った悪意の先手先手が勝る始末。
　東日本でも熊本でも火事場泥棒はいたが、政治・地形・気候・被害規模と、能登半島には不利な条件しかない。
　奥尻島のように島嶼部での地震も支援方法が制限されるが、7月だったことはポジティブな条件だったといえる。
　この記事を書いている時点の金沢テレビ ライブ映像でも焼け野原だった黒い町が白い町になっているのが分かる。まだ未明だが、延焼中や鎮火後とは全く色味が違う。
　輪島と珠洲の孤立状態は、これまでの地震とは一線を画しており、検証が進む中でその特徴が後世に語られるだろう。
　そして、それらが自民党金権政治の終焉につながれば、それはそれで明るい未来の端緒になるかもしれない。

　自分は東京の寒さだって十分凍え死にそうだと思うのに、北国は嫌だね。本当に寒いのは嫌いだ。
　でもロシアも今年を最後に行き詰っていくだろうし、イスラエルも気候変動の中で孤立を深めるだろう。
　全世界が気候変動で余力がなくなっていく中で、日本だけ変わらずにいられるわけもない。
　辰は「更地する」というニュアンスでゼロから始める時代の転換点。新たに生まれる巳「新生児」の受け皿を整える年。
　だから、更地にされる北陸は、今は凶でも、未来の吉兆を迎えたともいえる。少子高齢化と気候変動が重なる現代に吉祥を捉えるというのは貴重だ。
　今は更地を迎え、未来を信じて古志を起こせ！

白雪は黒い焦土を包み込む古志人の輪に明日を塗ろうと